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みぃとクロ。-タルパとの生活-

タルパと生活を共にするオカルトちっくな妄想日記。

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説得できない

「ヤギ、何度も言うが出来るだけ早めに話し合いの時間を作って欲しい。」

「どうして今、この時期に?落ち着いてからでも良いでショウ。」

「仕事が楽になる事はないからもう諦めた。いつやっても同じだ。だから今やると決めた。」

「しかし・・・」

「クロが限界だ。こちらに来たいと言っている。」

「・・・・・」


肘をつきながら不機嫌そうに私の話を聞いていたヤギは、溜息と共にソファーに深々と身体を沈めると、長い脚を蹴り上げる様に組み直した。

なんてだらしのない・・・執事としてあるまじき醜態。いつもの私ならば怒号とゲンコツを同時に飛ばしている所だ。
だが今日は、それ以上に大事な話をしなくてはいけない。私は思わず出掛かる自分の腕をがっちり組んで何とかこらえつつ、困ったように彼を見下ろした。


「ねぇヤギ・・・ヤギ。大事な話なんだからもっとちゃんと聞いてよ?」

「意に染まぬ話に何故畏まる必要が?」

「3人で話し合いをしようと随分前から約束していたじゃないか。クロは早く話し合いをしたいと、いつでも応じると言っているの」

「何を話す。『飼い猫が来るから執事は用済み』とデモ?」

「そんな言い方しないで。ちゃんと話をしてから今後の事を決めるつもりだけど・・・貴方は随分落ち着いたでしょう。だから、そろそろ・・・」

「私は帰らない。帰る場所も、ナイ。」

「それ(ダイブ界)については前から作ろうって何度も言っているじゃない、私も手伝うから。今回の件に限らず自分の生活の場はあった方が良いよ。」

「イラナイ。」

「あのね、お前いい加減に・・・」

「貴女の傍がいい。アナタ以外何もイラナイ。」

「・・・・・」


彼の赤い瞳で真直ぐに見据えられると、私は圧倒され言い返すことができずに口ごもってしまう。
ここ数日、こんなやり取りの繰り返しだ。


『私の仕事が落ち着いたら、クロとヤギと私と3人で集まって、今後私たちの関り方をどうしていくかの話し合いをする』
これは、ずっと前に交わした約束だ。(※詳細は過去記事(2015年3月頃~)

ただ今回の話し合いは「クロをこちらに連れて来る為に、ヤギには一旦ダイブ界に戻ってもらえる様説得をする機会」として考えている。
今後について話し合いをしようと表面上では言っておきながら、実のところ私の中では既に方針が決まっており、後は『約束』という言葉を盾に、自分にとって都合の良い主張を押し通そうとしているのだ。
何と勝手な主だろう。自分でもそう思う。

しかし、ヤギは去年の夏頃から生活を共にしており、状態も落ち着いている。ヤギには申し訳ないけれど、タイミングとしてはベストと考える。

そして正直な気持ちを言うと、今はクロの事が心配だ。人形の件もあって、クロには近くにいて欲しいと思っている。不安なのだ、私自身も。
そんな気持ちが、私にこんな横暴な振る舞いをさせているのだ。


ヤギは、私とクロの間に起きた人形の件を一切知らない。でも、私の様子から良からぬ空気を感じ取っているのだろう。
彼は今回の話し合いは自分にとって不利なものであることを理解しており、それ故主の求めであっても応じず、この様に反抗的な態度を見せている。

オート化し、個として確立した存在となったとは言え、私とパートナー達は深いところで繋がっている。私が心を乱すと、彼らも何らかの形で影響を受ける。
だから、ヤギがこの様な態度をとるのも私が悪いんだろうな・・・きっと。

焦る気持ちはある。どうにかしたいと思っている。が、こんな状態の彼に無理強いもしたくない。ちゃんと話し合いの中で説明してお願いして、どうにか納得してもらいたいところだ。

私は心を静め、ヤギに向かい、出来るだけ穏やかに声を掛けた。


「ヤギ、貴方の気持ちは嬉しい。でも、クロはもう何年もダイブ界で待っているんだよ」

「・・・・・」

「過去の事を掘り返して悪いが、お前もダイブ界に篭っていた(主によって強制的に閉じ込められていた)時期があったよね。その頃を思い出せば、クロの気持ちも察してもらえないだろうか・・・」

「・・・・・・・・・」

「いや、あの時と比較するのは間違っているな、ごめんなさい。上手く言えないんだよ、でも何とか話をさせてもらいたいの。お願い、どうか・・・」


私をじっと見つめていた彼の視線がふと、そらされた。怒らせてしまったかな・・・しかし何か考え込んでいる様にも見える。
ヤギはクロの事が嫌いだけど、似た様な経験をしてきた。クロの気持ちがわからないわけでは無いはずだ。



壁の時計に目をやると、いつの間にか日付が変わっていることに気が付いた。

固い表情のまま沈黙を続けるヤギに、少し心配になった私は彼の頬へと手を伸ばす。すると私のその手から逃れるように、彼は静かに姿を消してしまった。


嗚呼、言い過ぎた。・・・かなぁ。
私は先程まで彼が座っていたソファーの上に腰かけると、そのままゴロリと横になる。話をしただけでこんなにヘトヘトになるものか。低能な脳みそでも、それなりに使えば疲れるものなんだな。


私は過去にヤギとの間で馬鹿な過ちを犯している。衝突し互いに傷つけ合って、クロやクララにも多大に迷惑を掛けた。それ以降、その経験を教訓とし、タルパ(ナフラ)達との関わり方を意識して改めてきた。
だからヤギに対しては、こういった大事な話し合いをする時特に気を付けている・・・つもりだ。

ここまで自我が芽生えると、自分の都合で抑え込むことは難しい。それに抑え込むなんてしたくない、本当は私だって出来る事なら全部受け止めてやりたい。
でも、土台(現実)が安定してこその私達だ。そのうえで彼らの個々の気持ちにどこまで向き合い、寄り添い、受け入れる事ができるだろうか。


依存するな、のまれるな。
互いの最良の立ち位置を常に考え見極めろ。
線引きを誤るなよ。お前が『主』であることを忘れるな。

私の中のアイツが、悩める私にそう説教してくる。

黙れよ。あんたはウルサイから嫌いだ。

*

疲れた。今日はもう寝よう。

大きく伸びをして天井を見上げると、電気が煌々と光っていた。眩しくて寝づらい・・・でも、今日はこのままにしておこう。
パートナーがいない暗い部屋で1人で寝るのは寂しいもの。


そう思った時。ふと、タルパとの生活にどっぷり浸かっている自分に気が付いた。
自身を取り巻く浮世離れしたこの世界のなんと滑稽なこと。「主」ねぇ・・・そんなもんやめちまおうか。そうしたら少しは軽くなるのかな。


「阿呆らしい。何もかもが面倒だ。」

私はそう呟きながら鼻で笑うと、そのまま眠りについた。
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