FC2ブログ

みぃとクロ。-タルパとの生活-

タルパと生活を共にするオカルトちっくな妄想日記。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

本気の好き

クロと人形⑤ 前回

※※※今回はグロテスクな表現がある為、記事をたたんでおります※※※

人体の欠損や破壊、食人等に不快感を抱く方は閲覧しないでください。

*********************************************************************
*********************************************************************


私が厳しく詰め寄ると、クロは観念したようにゆっくりと立ち上がる。そして私に背を向け数歩前に出ると一旦立ち止まり、背中越しに私を見やった。
ついて来いと言うんだな。察した私が立ち上がると、彼は再び前を向き歩き出した。


茶の間を出ると、廊下が現れる。クロは先程私を迎え入れた玄関の前を横切って一直線の長い廊下を歩き、私はその彼の後ろを少し広めの歩幅で追って行った。

しかし長い廊下だな・・・彼の家は広い。以前クララと2人で住んでいたにしても、十分すぎる程の大きさだ。
少しして彼の背を追いながら歩く事に飽きた私は、ふと意識を別方向へ向ける。すると左には縁側の窓があり、そのガラス越しに彼の庭が見えてきた。

クロの庭には池があり、そこにはクロの腕程のサイズはある大きな魚達が飼われている。ただ、池の魚と言っても一般的にイメージされる金魚や鯉等ではない。
見た目は魚だが、その身体には毛(触手?)が無数に生えていて、それを使って泳ぐ(少しならそれを使って池の外に出られる)魚や、目や口が付いていない、つるつるでのっぺらぼうの魚等がいる。
更にそののっぺらぼうな魚の中には、ヒレ等のパーツが一切付いておらず、鱗のみに囲まれたサッカーボールの様な形状で、他の魚たちにぶつかりながら適当に移動する奇妙な魚(?)もいたりする。

そしてこの魚たちは青や緑、桃色や紫とやけに色鮮やかで、私が初めてこの魚を目にした時は思わず「これ、食べないよね?」と真っ先にクロに問いかけてしまった程だ。
しかしクロは、これらを食べられる魚だと答えた。クロはこの魚を食卓に出し、口にしているのだろうか。そしてクララも・・・私は正直、食べたいとは思わないが。とにかく、クロ宅の池は実に奇妙だ。

そんな池を眺めながら歩いていたら、パシャパシャと、魚達が水を打つ音が聞こえてきた。ガラス越しでかつ、それなりに距離がある位置に私は居るはずだが・・・意識しすぎて音までリアルに伝わってきてしまったのだろうか、うかつに見るものではなかったな。
私はその音を掻き消さんと、再びクロの背中に集中した。

廊下の直進が終わり、続いてクロが右に曲がり、私もそれに続く。変な池の奇妙な魚の音はいつの間にか聞こえなくなり、私は少しホッとする。が、ホッとしたところで今度は目の前に不思議な一郭を発見した。
クロの家は日本家屋であり、従って仕切りは全て襖やガラス戸なのだが、そこだけ何故か「ドア」があるのだ。落ち着いた色合いながら装飾が施され造りも凝っており、良くも悪くもそれがまた一層周囲に溶け込めず完全なる別世界となっている。
前を向いたまま振り向くことなく歩くクロに「ねえ、このドアは何?」と、言いかけて私はハッと気づく。きっとこれが、クロの言っていた「以前ヤギに貸していた部屋」ではないかと。

過去にエリザがヤギの屋敷に住み始めたことで彼の行き場所を失った時があり、クロが一時的に自宅の部屋の一つを貸したことがあった。その際ヤギが自分の住みやすい様に模様替えをしたらしく、いつの間にか自分が住めない程に改造されていたとクロが言っていたが、きっとそれがこの部屋なのだ。
しかし以前、彼は確か「最奥の部屋を貸した」と言っていたと思ったが。クロの歩みが止まらないという事は、最奥と言われていたこの部屋の更に奥にも部屋が存在するという事か・・・増築でもしたのだろうか。まあ、気にするほどの事でも無い。
ヤギに貸していた部屋の内装が気になるところだが、今日はそれどころではないだろう。

*

「ついたよ。」

ヤギの部屋を通り過ぎて程なくすると、クロが足を止める。
ここか。私は中に入る為その部屋の前に立つと、クロが襖の戸に手を掛けスッと開けた。

そこには10畳位の部屋が広がっていた。
私は中に足を踏み入れる前に、周囲をざっと見まわしてみる。家具等は何も見当たらず、ただ床の間に水墨画の掛け軸と一輪挿しの陶器が飾られている。いずれもクロの作品だろう。整然とした・・・と言えば聞こえはいいが、少しもの寂しい部屋である。
その部屋の中心には布団が敷かれている。おろしたての様に真白でふんわりとした、寝心地の良さそうな布団だ。そして、枕元には人の横顔がチラリと見えた。

「みぃだよ。」

もっと寄って確認しようと足を一歩踏み出すと、その脇でクロが呟く。私が驚いた様に彼の顔を見ると、ハッとして少し気まずそうな顔をしてから「みぃの『人形』だよ」と、更に小さい声で言い直した。

自分の人形が寝ている布団に近づき触れるほどの距離まで行くと、腰を下ろし改めてよく観察してみる。
一月ほど前、完成時に見た時と変わらずリアルな造りの人形だ。顔を近づけると、頬はほんのり赤みを帯びており、スゥスゥと、呼吸をする音が聞こえる。眠っているようだ・・・やはりこの人形は生きている。
そしてその顔の左目には、なぜか眼帯が付けられていた。なんでこんなものが・・・不思議に思いながらも、今度はそのまま下へと視線を移していく。上半身は白い着物が着せられており、胸から下は薄めの白い布団が軽く掛けられていた。

そこで私は異変に気付く。薄手の布団しか掛けられていない為身体の形がくっきりと浮き上がっているのだが、本来あるはずの場所に布団の盛り上がりが無いのだ。
私は掛け布団の隅を持ち少し持ち上げると、背後にいるクロの方を向く。クロは私の視線に気がつくと、何も言わず無言のまま目を伏せた。
好きにしろ、という事か。私は布団を一気に取り払った。


掛け布団が無くなり、白い着物を着た人形の全身が姿を現す。と、私は即座に気が付いた。
まず、私が座っている側の人形の手・・・右手が無い。袖の下に隠れているのか?私は念のため人形の袖を捲り上げてみる。すると、やはり腕は無く、代わりに付け根辺りに包帯が丁寧に巻かれている事が確認できた。

そして足。両足も見当たらない。同じく裾を捲ってみると、腕と同様断面に包帯が巻かれ、処置が施されていた。
この部屋に来る前、彼は人形を「少し食べた」と話していたが、まさか、これが・・・。
様々な私案が交錯してグルグルと動く視界の中、私はどうにか立ち上がり、クロの方へ歩み寄った。


「おい、クロ。何だこれは・・・どういうことだ。」

「・・・みぃを食べる行為は、君をとても嫌な思いにさせ怖がらせる事だと思っていた。だから、人形と言えどその日のうちに食べようと思っていた。」

「?」

「でも、このみぃは・・・彼女はボクを怖がらず、許してくれたんだ。」

「許した?」

「そうさ。「大丈夫だよ、いいよ」って。」

「・・・人形が口を利いたのか?」

「食べている間、ボクを見つめて微笑んで、ずっと見守ってくれた。それがとても嬉しかった。」


クロは私の質問に対し、当時の事を思い出す様に話し始めた。
クロに食べられる事を人形が受け入れた?
この人形は生きていると確かに私も思うが、感情は無いはずだ・・・少なくとも前回の人形には無かった。だからそんなやり取りはありえないはずだ。彼の言う事が良く分からない。
私は更に問いかける。


「お前何を言っている?もう一度聞くぞ。この眼帯は・・・右手と両足は?包帯は?お前はこの人形をどうしたんだ。はっきり答えろ。」

「目と手足は食べて、その後包帯で止血した。でも、目を食べるつもりは無かった。」

「それはなぜだ?」

「ボクを許してくれたその目が大好きでずっと舐めていたんだ、そうしたら壊れてしまって治らなくて・・・悲しかったけど勿体ないから、取り出して食べた。」

「・・・・・・・・」

「それから胴体部分も、少し。確認したいならその着物を・・・」

「もういい・・・やめろ。それ以上言うな。」


私は両手で顔を覆いながらそう言うと、そのまま乱暴に髪をかき上げた。


なぜこんな事になったのか。
クロに髪の毛を渡して、人形を作って食べて、それで終わるはずだったのではないか。
なのにどうして、この人形は一月経っても未だに彼の家に居るのか。介抱しながら食べている?食べ物なのに?どうかしている。
そんな否定的な思いと共に、今まで自分の奥深くに潜んでいた、複雑に絡み合う何とも表現し難い感情がふつふつと沸き上がっていくのを感じる。この気持ちは何だ、怒りか、恐怖か・・・愛する彼に自分の人形が喰われることがそんなに嫌か?それだけじゃない。もっと別の何かだ。



「クロ、この人形返せ。」

私は唐突に、彼にそう言い放つ。するとクロは、思いもよらない言葉を聞いたかのように、愕然とした表情を私に向けた。


「どうして?怒られることは覚悟していた、でも返せだなんて・・・このみぃは契約して、ボクが貰ったものじゃないか。」

「確かに契約は交わした。そしてこの人形の目的は食べる為と了解していた。でも、この食べ方は何だ?こんな事になるなんて聞いていない。」

「全部食べるよ、本当だ。でも・・・もう少し待って欲しい。」

「あれから一月以上経った。その間コレを生かしつつ傷を治しながら食べていたなんて・・・お前頭おかしいぞ、狂ってる!知った以上黙って見ていられると思うか?」

「おかしくない、狂っていない!ボクだって最初はすぐに食べようと思った。でも、このみぃはボクを許してくれた。ボクの本気の好きを受け入れてくれたんだ。だから・・・・・」

「だからどうした?食べるのが惜しくなったとでも言いたいのか?冗談じゃない、私は、こんなの・・・・・とにかく返してもらう!」

「駄目だ!」


眠る人形の元へ行こうと身体の向きを変えた私の目の前に、クロが素早く回り込むと両手を広げて立ちはだかった。


「クロ、そこをどいて。邪魔をしないで。」

「嫌だ、ボクはどかない。」

「黙れ。命令だ・・・どけ!」

「・・・・・・・・・・」


クロは返事をせず、全く動く気配がない。それどころか猫耳やしっぽの毛を逆立てて、牙を剥き私を睨み付けている。たとえ命令であろうが絶対に応じないという事か、こんな反抗的なクロを見るのは久しぶりだ。だがこちらも引く気はない。
私も負けじと彼を睨み上げると、自分の右手を広げクロの前へズイと突き出す。すると私の手の周りから銀色のリングが現れた。


「クロ、これが何だか覚えているか。」

「・・・・・・・・」

「『拘束(弱体化)リング』だ。これ以上私に逆らうならどうなるか分かるな?大人しく下がれ。」

「・・・・・・・・嫌だ。」

「私はお前にリングを使いたくない。頼むから言う事を聞いて!」

「駄目だ、取らないで・・・彼女を連れて行かないで。みぃお願い、お願い・・・!」

「クロ!!」

「嫌だ・・・嫌だイヤだ!わあああああ!!



静まり返った部屋の中を、クロの絶叫が響き渡った。


続き
スポンサーサイト

| @クロ | 19:48 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

PREV | PAGE-SELECT | NEXT