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みぃとクロ。-タルパとの生活-

タルパと生活を共にするオカルトちっくな妄想日記。

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クロの隠し事

クロと人形④ その後。
前回

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気が付けばクロとの約束を果たした日から1か月ほど経っていた。
早いものだ・・・あの日以来、クロからは何の音沙汰も無い。契約を交わした為、控えているのだろうか。

現在の私は、仕事が忙しく傍にいるパートナー達意外とは中々密な関わりを持つことができない。それでも皆が寂しい思いをしないようにと、できるだけ声は掛けているつもりだ。
クロにも約束の日の後、暫くしてから何度か声を掛けてみた事があったが、あいさつ程度で込み入った話はしていなかった。

直接彼に会いに行けばよかったのかもしれないが、積極的に足が向かなかったのは、自分が忙しいからだけでなく、人形の事で何となく気まずさを感じており、直ぐに会いに行こうという気持ちになれなかったからだと思う。


しかしそんなある日、私はふと、彼に会いに行く事にした。
暫く会っていないので様子も気になる。1か月経った事だしそろそろ落ち着いたろう・・・私はそんな風に考えたのかもしれない。


*


彼の家の前にたどり着くと、私は呼び鈴の無い、大きな玄関の戸を叩く。
暫く待ってみるが反応が無かったので、私は続いて「おーい、クロ、クロ。」と声を掛けながら再度戸を叩いてみる。すると家の中から物音がしたかと思うと、扉がガタリと動いた。

「・・・おや、みぃ?」

人が覗ける程度に少しだけ戸を開けたクロは、目の前にいる私を見ると驚いたような顔をした。いつもなら突然出向いても相手を確認することなく戸を豪快に開け、喜んで迎えてくれるのだが・・・今日は随分と警戒したような開け方をする。
久しぶりに会いに来たことを伝えると、少し考えるような素振りを見せた後、「・・・どうぞ、入って」と、家の中に招いてくれた。


家に上がると茶の間に通され、丸いちゃぶ台の前に座布団を敷いてくれる。私がそこに座ると、クロは台所へ立ちお茶の準備を始めた。
私が席に座って、彼がお茶の準備をしながら会話をする事もあるが、今日の彼は無言で準備をしている。まあ、会話は彼がこっちに来てからでも良い。とはいえ、お茶を待っている間ぼうっとしているのも暇なので、私は茶の間に目新しいものは無いか、キョロキョロと見渡してみた。

昭和レトロな家具に囲まれ、壁や棚の上には自分で作成した趣味の掛け軸や焼き物が並べられており、彼が作った陶器の一部には綺麗な花が生けてある。その花は、ガーデニングが趣味の妹、クララからもらってきたものだ(以前クロがそう言っていた)。
因みに、クララの家にも兄、クロが作った陶器がいくつかあり、そこにもまたクララが育てた花が飾られている。この猫又兄妹は本当に仲が良く、趣味を通しての交流も多い。そんな二人のやり取りを想像するだけで、私は微笑ましく、また嬉しくなってしまうのだ。

そんな中、ふと、今まで無かったものに目が留まる。そこには彼の服が掛けてあった。
印象的な黒いマントに学生帽子・・・この前、クロが私から髪の毛を受け取りに来た時に着ていた制服だ・・・以前来た時は、こんな所にかけてあっただろうか。
私はその制服を眺めながら、何となくあの日の出来事を思い返していた。

*

「やあ、またせたね」

暫くすると、クロがお茶を運んできた。
ちゃぶ台の脇で腰を下ろし膝をつくと、まず私から湯呑を置いてくれる。「あ、どうも」と小さく頭を下げると、「どういたしまして」の返事の変わりにしっぽで私の肩の辺りをふわりと撫でる。そして続いて別のお皿に手を掛けると、チラと、私を見やった。

「今日はお菓子じゃ無いんだけど食べてみて。とても美味しいから」

そう言うとクロは、小鉢をテーブルにトンと、置く。覗いてみると、白っぽいものが2種類盛られている。顔を近づけてみると、私の知っている香りが漂ってきた。


みぃ:「わあ・・・これはもしや「漬物」かな?」

クロ;「うん、そう。大根と白菜の漬物だってさ。クララが作ってくれたんだ」

みぃ:「そうか、クララが・・・いや、なんとも」


しぶいな。と、私は笑う。元々和食が得意なのは知っていたが、それでもあの可愛らしい風貌で漬物を作る姿なんてあまり想像できない。
そんな事を思っていると、クロが私の目の前に爪楊枝のケースを差し出してくれる。私はそこから一本頂戴し、早速食べてみる事にした。


みぃ:「あ・・・美味しい。」

クロ:「だろう?ボクも美味しくて沢山食べたから、もうほとんど残っていないんだ」

みぃ:「そっか。クロは漬物が好きなの?」

クロ:「好きだよ。それにクララの作った野菜は『ウマウマ』で出来ているから特別さ。」


なるほど。特別、か。
クララの作る野菜は、兄が喜ぶという理由もあり全て「ウマウマ」で作られている。「ウマウマ」とは、主の体内から取り出せる物で、様々な食べ物に変化することができる。これは言わば「主の血肉の代用品」の様な物であり、主を食べたいという願望が叶わないクロが、それを食べることで欲求を抑えてきた(カテゴリ:食事シリーズ参照)。
しかし、以前はこの「ウマウマ」だけで事足りていたのだが、次第にそれだけでは満たされなくなり、主を食べたいという願望が再び強くなってしまう。その様な中で新たに出てきた代用品が、今回交わされた契約の対象となった「主の髪の毛で作られた人形」なのだ。

この新たな代用品はウマウマと違い見た目が食べ物ではなく人の形をしている。初めて作成された時は小さな玩具の人形の様だったが、血肉は人間と同じだった為、それを彼に食べられた時はショックを受けた。
そして自分の人形を食べられたくない主と、どうしても食べたいクロとの間で意見が衝突し、当時は今後一切、人形を食べることは許可しないつもりだった(保留とはなっていたが)。しかし、獣人のクロとのかかわりを経て、考えを改める事にしたのだ(カテゴリ:@クロ参照)。

そして今回。ヤギの件でクロと契約を交わし、彼は私の髪の毛で再び人形を作成することになったのだが。出来上がった人形を見た時、前回とは比べ物にならないその人間らしいリアルな完成度に、私は驚きと同時に何とも言えない違和感を抱いてしまった。


私は改めて小鉢の中の漬物に目を向ける。
・・・あれも漬物の様な「物」であったなら、ここまで悩まされずに済んだのだろうな。
私はため息をつきながら、爪楊枝をそっと紙に包んで置いた。



「クロ。」

「何?」

「あの人形・・・食べたのか?」


今日は彼の様子をそれとなく確認できれば良いと思っていた。だから、人形の事を聞くつもりは無かった・・・はずなのだが。会話の流れと、彼と契約を交わす中で抱いた複雑な想いが私をそうさせたのだろうか。私は自然と彼にそう問うていた。
そしてその問い掛けと同時に、彼の動きがピタと、止まる。

クロは何も答えない。私は暫く返事を待ってみるが、彼はただ、下を向き押し黙っていた。
私は返事を催促するように、身体を傾け彼の顔を覗き込む。しかし、彼の顔が見えた・・・と思った瞬間、露骨に目を逸らされた。

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みぃ:「どうしたの、なぜ黙っているの?」

クロ:「・・・・・」

みぃ:「もう一度聞くよ。お前は、あの人形を、食べたのか?」

クロ:「・・・・・」

みぃ:「クロ、答えなさい。」

クロ:「・・・・・食べてない。」

みぃ:「食べてない?」

クロ:「・・・・・いや、食べた。」

みぃ:「食べた?何だ・・・どっちだ?」

クロ:「食べた・・・少し。」

みぃ:「??」


「食べた」けど、「少し」?・・・意味が分からない。
私はどういうことかきちんと聞いてみようと、ちゃぶ台の向こうに座るクロの方へ身を乗り出す。するとクロは私から逃れるようにズルズルと後ずさり、壁に当たってそれ以上行き場がないと分かると、今度は背中としっぽを丸め、猫耳を伏せながらうつむいた。

玄関で出迎えてくれた時から感じていたが、クロの様子がいつもと違う。主になにか隠している・・・しかも、あまり良くない事だ。そう直感した私は、今度は少し強い口調で問いかけた。


みぃ:「あの人形、まだあるんでしょう?」

クロ:「・・・・・」

みぃ:「どこ?見せてよ。」

クロ:「・・・・・でも」

みぃ:「見せなさい!」



私がそう詰め寄ると、クロは観念したようにゆっくりと立ち上がった。

続き
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| @クロ | 16:05 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

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